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二重円筒型双結晶について

2.通常の双結晶と二重円筒型双結晶

 材料の力学物性に関する考察,特に引張試験においては,右図の(a)から(c)のような,直線状(平面状)の粒界を含む双結晶を用いた研究が行われてきた.結晶粒界は,塑性変形の抵抗となり材料強化に有用な場合もあるが,そこでの優先的な破壊が生じて材料強度の低下をもたらす場合もある.このような力学物性に及ぼす結晶粒界の影響は,結晶粒間の方位関係や粒界面補面方位といったの結晶学的因子によっても変化するし,温度やひずみ速度といった変形の条件によっても変化する.このように多様に変化する現象を考察する際に,右図のような双結晶試験片を用いた研究は大きな効力を発揮している.

 しかし,右上図(a)から(c)のような直線状(平面状)の粒界を含む双結晶では考慮できない多結晶中の状況もある.その一つは,
「ある結晶粒が他の結晶粒に取り囲まれている状況」
である.変形中の多結晶内部では結晶粒同士が押しあったり,引っ張りあったりしており,それらの挙動は個々の結晶粒界で起こる現象に大きな影響を与える.そこで,最も単純化されたものとして「ある結晶粒が他の結晶粒に取り囲まれている状況」を扱うための双結晶,これが二重円筒型双結晶である.高温変形時に粒界で発生しやすくなるクラックも,隣り合う結晶粒の塑性変形様式によって,発生しやすい場所とできにくい場所がある.さらに詳しくはこの論文へ