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二重円筒型双結晶を用いた研究の背景について

1.まず,多結晶と単結晶

 多くの金属材料は結晶性物質であり,ほとんどの実用材料は数多くの結晶粒(結晶の方向が揃っている”粒”状の領域)から構成される多結晶材料である(右図(a)).結晶構造や格子定数が全く同じであっても,方位が異なる結晶粒のあいだには,結晶粒界と呼ばれる境界面が存在する.結晶本来の諸物性,例えば力学的性質を考察するためには,結晶粒を極めて粗大化させて結晶粒界が含まれない状態にした,単結晶(Single crystal,右図(b))を用いた研究が行われる.
 しかし,多結晶全体の物性は,結晶粒界の

1) 形や大きさといった幾何学的因子,そして
2) 結晶粒間の方位関係や粒界面の面方位といった結晶学的因子

の変化によって大きく変化する.数多くの結晶粒と結晶粒界を含む多結晶を対象にした研究を行っても,結晶粒界が材料全体の物性に影響を及ぼす具体的な中身を整理した形で理解することは困難である.
 そこで,これらの因子を単純化して考察するため,多結晶の最小構成要素である,二つの結晶粒からなりただ1つの結晶粒界を持つ結晶,つまり双結晶を用いた研究がかねてより行われてきた.