研究内容
研究室について
藤居・雷研究室は2023 年度から新たな連携体制で始動しました.研究室では,学生の自主性を尊重し,自らの思考力と問題解決能力が発揮できることを大切にしています.特に,研究開始にあたっては,先行研究を丁寧に調査すること,それらを理解して自らの立ち位置でオリジナルの研究が展開できるように心がけています.

| ・金属材料の繰り返し変形に伴う転位組織の発達過程(藤居・黄) 金属材料を繰り返し変形すると,材料内部には図1のような転位組織が形成されます.これら転位組織は,材料に与える応力振幅やひずみ振幅の大きさに依存するとともに,繰り返し変形の進行に伴って発達していきます.しかし,その形成・発達機構には未解明な部分が残っています.Cu 単結晶において複数のすべり系が働いた場合に形成される転位組織( 図3) などはその一例です.このような転位組織の形成・発達機構の究明を目的として,最新の超高圧走査透過型電子顕微鏡を用いた組織観察とその解析を進めています. |
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| ・曲げ剛性解析の数理的アプローチの開拓(雷) 回位を持つグラフェンシート(Graphene Sheet:GS)における曲げ剛性解析の数理的アプローチを開拓し、分子動力学シミュレーションと、微分幾何学に基づくヘルフリッヒ膜理論を融合することにより、ナノスケールにおけるGSの曲げ剛性を精度良く評価可能な新たな数理手法の開発に成功しました。本研究では、ナノスケールでの曲げ剛性を理論的かつ定量的に評価可能な解析手法を提案し、格子欠陥の配置や密度などを精密に制御した新規ナノ炭素材料の設計指針を提示することが可能となりました。さらに本手法の確立により、ナノスケール材料における力学特性と幾何学特性との明確な相関を理論的に示すことが可能となり、実験的検証や産業界における材料設計への応用も促進されることが期待されます。 学術論文:https://doi.org/10.1039/D5NR01102G
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| ・銅合金の微細組織と各種特性(藤居・黄) スマートフォンやテレビなどの電気・電子機器に用いられる配線用銅合金には,高い強度とともに高い導電性が求められます.高強度化のためには,銅に異種元素を添加し,熱処理による析出強化を行います.しかし,一般に,材料強化のための異種元素添加は導電性低下を招きます.この問題を解決すべく,熱力学や相平衡論に基づく材料組織制御の手法を探求しています.また,巨大ひずみ加工による結晶粒超微細化に着目し,複数の強化機構の重ね合わせによる強度- 延性バランスの最適化や組織の熱的安定性向上にも挑戦しています. |
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| ・ナノスプリングの変形機構と機能設計(雷) カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube: CNT)に転位双極子を導入することによるナノスプリング設計手法を提案し、力学と幾何学を融合した解析を行い、ナノスプリングの力学特性および幾何学的特徴を明らかにしました。本研究では、連続分布転位理論に基づき、離散的な結晶構造を持つカイラリティおよび長さの異なる様々なCNTに三種類の転位双極子を導入したシミュレーションモデルを構築しました。転位の面内すべり変形と転位双極子の相互作用に基づく自発変形により、前例のない格子欠陥制御によりナノスプリング設計手法を提案しました。従来はCNTの外形的な曲率制御に焦点が当てられていましたが、本研究は内部構造に由来する転位双極子の種類、密度、配置を精緻に制御することで、ナノスプリングの力学特性(ばね定数)と幾何学的形状(Willmoreエネルギー)を同時に制御可能であることを初めて示しました。 学術論文:https://doi.org/10.1021/acsanm.5c00619
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| ・マグネシウム合金のキンク形成とキンク強化(藤居・黄) シンクロ型長周期積層構造(LPSO) をもつマグネシウム合金は,加工によってキンク変形し,キンクの形成に伴って著しく強度が増すことが知られています.合金内でどのようにキンクが形成され,なぜキンク導入によって合金強化されるかは,ここ数年で明らかになったことがあるものの,未解明の部分も残されています.マグネシウム合金におけるキンク形成とキンク強化が実験と理論の両面で解明されれば,マグネシウム合金に限らず,他の合金,さらには,有機材料や無機材料にも応用可能な新たな材料強化手法を生み出せる可能性があります. |
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| ・ナノ積層構造体における変形メカニズムに関する分子動力学解析(雷) ナノ積層構造体は材料工学や物性物理学の分野で急速に注目を集めています.本研究では分子レベルにおける精緻なナノ構造,機能をマクロレベルの材料の構造,機能に繋げる方策を探るため,幾何学および分子動力学シミュレーションによる原子構造情報から,積層構造体の変形メカニズムに関する研究を進めています. 学術論文:https://doi.org/10.1016/J.COMMATSCI.2022.111487
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| ・カーボンナノチューブバンドル構造体のねじり変形による回位生成を発見(雷) ねじり変形を加えたカーボンナノチューブバンドル(CNTB)構造体に回位が生成され、このCNTB構造体内の回位線が長いほどヤング率が低くなることを明らかにした。本研究では分子動力学シミュレーションにより、CNTB構造体内に回位が発生することを発見し、その回位が力学特性に強く影響することを明らかにするとともに、回位線が長いほどヤング率が低下することを明らかにした。さらに、ねじり変形を受けたCNTB構造体内における回位線の存在は、CNTBの引張特性を低下させる因子となることを見出した。 学術論文:https://doi.org/10.1016/j.carbon.2024.119287
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東京科学大学 物質理工学院研究室紹介 東京科学大学物質理工学院材料系研究室紹介#1 (藤居研究室は3:43から) |
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