尾中研究室が行っている研究の主要なテーマの例は以下があげられる.
材料における微細組織の形成と遷移に関する研究
材料組織は多様に変化し,その変化は材料全体の物性の変化と密接に関連する.材料における微細組織の形成と遷移について,その理由を実験的・理論的に考察している.例えば,別ページ(クリックしてみよう!)に図を付けて詳しく書いてあるように金属中の析出物の形状は球と立方体のあいで変化する場合があるが,微細組織の形成と遷移は形の科学としても面白い.
球と立方体以外の多面体のあいだの形状にもおもしろさがある(ここもクリックしてみよう.).そのような形を材料組織の中に探すとともに,形の由来を種々の観点から考えている.
二重円筒型双結晶による結晶粒界についての研究
二重円筒型双結晶とは,円筒型の金属単結晶とそれを包み込むようなもう一つの金属単結晶で構成される”チーズちくわ”のような双結晶である.つまり,中芯の“チーズ”も,外の“ちくわ”もともに金属の単結晶,そしてそれらが円筒面でぴったりくっついての二重円筒型双結晶である.実際の大きさも”チーズちくわ”の大きさに近い.この双結晶は結晶粒同士の方位関係が一定で粒界面方位が連続的に変化するという特徴を持ち,この特徴を有効に活用して結晶粒界が材料物性におよぼす種々の影響を考察している.
変形・破壊の速度論と構造材料の高強度化に関する研究
一昔前の探偵小説の一節,「タフでなければ生きていかれない」とは人についてのことだが,材料も同じである.何かをしっかり支えること,これが材料に対する主要な要求になる場合も多い.
材料の変形と破壊を実験的・理論的に考察している.特に高温域における現象は,材料中の活発な固体内拡散によって様々に変化する.また,変形によっての思いがけない組織変化やその組織変化を原因として性能の向上が起こることもある.変形と破壊の素過程が理解できるような実験を,それに適した試験片の作製を含めて工夫しながら行っている.
材料の力学物性についてのマイクロメカニックスによる解析
マイクロメカニックスは,複相材料を構成する各相の強度や形状,割合が材料全体の力学的状態におよぼす影響を定量的に考察するための理論といえる.計算より実験が好きという人もいるが,実験結果についてのある理解をぴったり裏付ける計算結果が得られたときの達成感も大きなものである.実験と計算の両方が自分でやったものなら,なおさらである.マイクロメカニックスに基づく考察を発展させることによって,各種の複合材料や第二相を含む合金の変形挙動そして材料組織形成についての理論的な予測を行っている.
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