金属材料の疲労変形組織と変形機構

Fig4
図4 3003Al合金を室温で繰り返し変形したとき合金内部に形成される転位組織.組織形態からラビリンス組織と呼ばれる.

 材料を繰り返し変形(疲労変形)すると,材料内部に対称性の高い特有の組織が形成されます.図4にAl合金を疲労変形したときに形成される特異な転位組織 を示しました.組織を特徴づけている転位壁の厚さ,間隔,方向などは,材料強度に関連する応力・ひずみと密接に関係を持ちます.
 藤居研究室では,材料の変形中に起きる組織変化を捉えて,繰り返し変形の素過程を解明しようとしています.
 藤居研究室は,物質理工学院の尾中研究室と研究室連合「かものはし」を形成し,共同研究を行っています.学外の研究機関(名古屋大学 未来材料・システム研究所,物質・材料研究機構,ローレンス・バークレー研究所など)や企業との共同研究も進めており,ソフト・ハードの両面で広範囲な研究の展開が可能です.例に示しました透過電子顕微鏡写真のスケーリングをしておきましょう.直径3ミリメートルの薄膜試料中にある直径3ナノメートルの粒子を定量解析するということは,首都圏がすっぽり入るほどの直径30キロメートルの広い大地を空から眺め,直径3センチメートルの金貨に書いてある文字を解読することに相当します.宝探しは大変ですが,見つかったときの喜びは絶大です.