コルソン合金の繰り返し変形に伴う軟化

CuNiSi_PSB
図6 Cu-Ni-Si合金単結晶内で繰り返し変形によって形成された固執すべり帯.

 コルソン合金と呼ばれるCu-Ni-Si合金は,Cu母相内にNi2Si粒子を析出させることによって高強度化可能な析出強化型合金の1つとして知られています.析出したNi2Si粒子は,直径が数ナノメートルであり,本合金を塑性変形させると転位によってせん断されます.したがって,本合金の繰り返し変形の場合にも,析出粒子の変形挙動が合金の変形機構に大きく影響します.
 Ni2Si粒子を析出させた単一すべり方位のCu合金単結晶を,一定の塑性ひずみ振幅1×10-2で繰り返し変形しますと,主すべり面に平行に固執すべり帯(PSB)が形成されます(図6).PSB内では,析出粒子が転位の往復運動によってせん断変形を受けることにより,母相に再固溶していることがわかります.PSBが形成されますと,このやわらかい領域のみで変形が進行しますから,合金の繰り返し変形応力も低下して行きます.
 藤居研究室では,析出強化型Cu合金を中心として,組織制御による耐疲労特性の改善の研究を進めています.
 ここにご紹介した研究成果が,文部科学省科学研究費補助金,基盤研究(C)22560690の支援を受けて得られたものであることを記し,謝意を表します.